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第十四回「狡くて、ビビりで、安直で」

アルバムの発売日が近づくと、自然と日記を書く手が止まる。

自分の書いてる文章に、“いやらしさ”や、“伝えたい知ってもらいたい”と云う欲望が至る所にチラついて一人で冷めてしまう。何しろこの場所は、閉鎖的な自分の部屋。そこで俺が自慰行為に及ぼうが、誰かの悪口を大声で叫んだって問題はない、はず。覗きたい変人はどうぞご勝手に、と云うアブノーマルな趣旨だったはずだ。

そんなめんどくさい葛藤のせいで、死んでいった幾つもの文章たちが最近は俺の周りを成仏できずウロウロと彷徨っている。

文章を書くのが幾ら上手くても、テーマが陳腐では意味がない。
それはどんなに歌声が素晴らしくても、作詞作曲がへっぽこなシンガーソングライターや、
絵のタッチは面白いのにストーリーがつまらない漫画みたいなもんだ。
言葉の小気味良さやリズムで誤魔化したくないから、時々、あえて下手な人っぽく書いてみたりしている。

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「苛立ち、焦燥、せっかち、不機嫌、疑念、虚無、仮面、無表情、破綻、諦め、怠け、鬱々、ビビり、狡さ、安直、弁明、屁理屈、嘲り、我が儘」

これらのオドロオドロしい単語の羅列は、俺の社長が夜中の4時に悪夢から目が覚め、ふと

「古舘は何故もっと世に愛されないのか、何故多くの人に理解されないのか」

と考え出したら眠れなくなり、そこから朝方までかけて俺と云う人間に当てはまる単語をパワーポイントにまとめたものである。一見、中々の悪口に見えるが、(というかほぼ)、
次の日の打ち合わせで、これが書かれている一枚のA4の紙がみんなに配られた時は、メンバースタッフ一同、笑いが起きてしまった。不思議と、俺自身も今まで得体の知れない敵と闇雲に戦ってきたが、ようやくその正体の裾を掴んだ気がして、少し楽になった気がした。流石に喜びはしなかったけど。

「これがあなたの長所であり、オリジナリティである。」

と社長は言った。一休さんに出てくる和尚みたいなことを言う人だ。

俺は、自分のことをこんなにも気遣いで、真面目で、まともで、誠実で、心優しい人間はいないと思って生きてきた。
鏡を覗き込むと、そこには全く知らない他人が呆然と写っていた。

君変わってるね。って言われても、全然嬉しくない。
君尖ってるね。も凄く嫌だ。
君面白いね。もウケ狙ってねぇ、ってなる。
君カッコいいね。も気持ち悪ってなる。
君文学少年だね。も論外。
君ロックだね。もはや穴があったら入りたい。

そんな風にしてあらゆる他者の評価を自分とは違う、と拒んで来て、一体俺はどんな自分になりたいんだろう?

心の奥底へともっと潜り込んでみる。
本当の本当の本音を言うと、何にもなりたくない。うん、何にもなりたくないんだと思う。

でもそんなこと言ったって周りからしたら、はぁ?って思うに決まってるし、そんなんじゃ誰にも理解してもらえないこともわかっている。ただ心は間違いなく、“何にもなりたくない”が真実に一番近い。

説明が難しいから、嘘ついて何かになりたい、フリをして来た。
そりゃ所属の社長が、夜中に目を覚まして頭を悩ませるのも頷ける。

かつて俺が好んで読んでいた小説の主人公たちはみんなそんな奴らばかりだった。
みんなそれなりに裕福で、都市に暮らしていて、そんなに絶望も苦しみも味わわず、その分喜びも達成感も同じように味わわず、程よく元気で、程よく虚無だった。

そして何より一人も漏れず、みんな“何にもなりたくない”だった。
そんな奴らが紡ぐ物語の終わり方は決まって可もなく不可もなく、寂しげに終わる。
ハッピーエンドを迎えた奴は、、いたっけな?

当時は、まさかその物語に出てくる奴らに自分が似てるとは到底思いもしなかったからいいけど。そっち側の人間なんじゃないかと気づいてからは、狂ったようにハッピーエンド物の作品ばかり好むようになった。彼らには悪いけど、はっきり言ってあいつらみたいな終わり方は嫌だからね。頑張って、フリを続けるしかないんだ、と。

最近はそんなのにも疲れて来ちゃって、溢れ出て来ちゃってるのかな。
その本音みたいなもの、曲がった素直みたいな部分、隠し切れなくなって来ているのか、音楽に乗せて無意識に吐露してしまっている気がする。

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““それで生まれたのが4月3日発売サードアルバムです。””

やっぱり、最後は宣伝か。ほら、俺は狡くてビビリで安直で矛盾な奴だろ?

結局こんだけ鬱々とあーだこーだ書き連ねてからじゃないと、人に素直に伝えられないのだ。

最大の、自己嫌悪と自己愛を込めて今日はここまで。

P.S
町の開放プールで、狭い往復コースを平泳ぎならギリOKとしても、(百歩譲ってね。)
背泳ぎとバタフライで泳ぐ奴って何なの?
下手なのに無理するなよ。こちとら誰の邪魔もせず黙々とクロール泳いでるのに。
ぶつかるの怖いんだよ、まったく。

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