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第七回「心のどっかで」

「 昨日といい 今日とくらして

あすか川

流れてはやき 月日なりけり 」

神社で引いたおみくじに書いてあった。

うーん意味がわからない。何故おみくじには、決まってよく分からないような謎の文章というか、短歌?が冒頭に書いてあるのだろう。演出なのかな。
荘厳な雰囲気から始まらないと人間が信じないとでも思っているのだろうか?今の現代人は無駄が一番嫌いなんだから、そんな雰囲気作りのスペースを取るなら、ゲッターズ飯田さんみたいにもっと詳しく占って欲しいな。

運勢は、今年も中吉。思い返せば何年も連続でずっと中吉な気がする。ちくしょう。

年末は、久しぶりに歌詞が書けなくなっちゃった。レコーディングの日はどんどん近づいてくるのに全然完成しない、という恐怖体験。

心のどっかで、今までどれほどキケンな状態になろうとも最後は何とか乗り越えてきたから、今回も変な自信と余裕だけはあって。

でもいよいよ時間がなくなってきてるのに、全然出来なくて。

それはそれは生きた心地のしない日々だった。

書いては消し、決しては書き、また振り出しに戻って。人の意見を求めて、聞いたら聞いたで、余計混乱して。

因みに詩は、一応出来てはいるのよ。でも一応出来ている、だけなの。
問題点は自分でそれが気に入ってないということ。じゃあ変えれば、と思うかもしれないが、焦る気持ちも相まって既存のテーマとイメージが脳にこびりつき、そこから中々抜け出せない。

一番タチ悪いのは真っ白ではなくて、中途半端に完成してしまっている時。只々、同じ場所をグルグルと回る羽目になる。

そんな悶々とした日々を過ごしていたら、

とうとうレコーディングの当日がやってきた。

当然、歌いたい詩は完成していない。ここまでの危機的状況は人生初めてだった。昨夜も遅くまで、書き上げたものはある。でも夜が明けてさっき読んでみたら、殆ど変わってない、むしろ退化したとも言える、とても酷い出来だった。

幸か不幸か、その日はもう一曲のカップリングのレコーディングが思ったよりも時間がかかってしまって、その曲の歌入れは翌日に引き伸ばしになった。勿論その翌日というのが本当の本当のデッドライン。明日までに歌詞が完成してなければもう、お終い。妥協した作品を世に出すか、全てキャンセルするか、のどちらかの道へ。まぁどちらも地獄行きだ。

時刻はPM11:00。薄っすら諦めモードが場に立ち込める。

普段なら「ヤバイ!」だの「助けてくれー」だのギャーギャー騒ぎかねない状態だが、

絶体絶命、首の皮一枚繋がった俺は、

不思議と心穏やかだった。

火事場の底力なのか、覚悟が決まったのか、ヤケクソなのか、今思い出しても不明だが、

自信に溢れていた。武者震いさえしていた。

横にいたベースしんのすけに、

「ちょっと朝までファミレス付き合ってくれ」

と一言伝え、

2人でファミレスに向かった。

そこから、2人は朝まで殆ど何も会話をしてない。

俺はノートパソコンを広げ、イヤフォンをして、今まで書き上げてきた歌詞を、全てデリートした。三週間分のぐちゃぐちゃになっていた画面は、綺麗さっぱり真っ白になった。すっと、憑き物が取れ。

まだテーマも、タイトルも、歌い出しも何も決まってないが、

ケータイをいじっているしんのすけに、

「今日お前を名曲の誕生に立ち会わせてやる。」

なんてわけのわからんことを言ってみたりした。

相変わらずしんのすけは、クスッと笑いもせず、無表情の真顔ゴリラで、

「うい。」

と頷くだけだし、徹夜なんて高校生の試験前振りで、ちょっと眠くなってきてるし、

よし!と気合を入れて、

挨拶がわりに、早速キーボードのEnterを力強く押した。考えるより進むことだ。







朝方4時。

完成した。それも全く違うものとなって生まれ変わった。出来てホッとしたというより、良いものが書けた喜びに満ちていた。

「しんのすけ、ありがとう。」

と伝えると、またも、おんなじ顔で

「うい。」

と頷いて、自転車で颯爽とゴリラは帰っていった。彼は、NHKのプロフェッショナルに出てくる職人並みのブレなさだった。でも、彼のおかげである事は間違いないので、心の中でもう一度お礼を告げて、家に帰った。

朝。

自宅に着いて、寝て、昼過ぎから歌入れが始まり、見事レコーディングは終わった。やれやれ、ほんとどうなる事かと思った。

自分でワクワクしながら、ドキドキしながら、時にグッと来ながら、書いた文章じゃなくちゃ、納得なんて出来ないんだ。ということに改めて気付かされた。

三週間もの間、それを忘れていたようだ。まるで、苦行みたいな気持ちで書いていたからね。

今回は良かったものの、

一つ言えることは、今後は普段から前もって、危機感と共に、早め早めからテーマを絞り込んで、取り組むというスタンスを誓った。まぁ、当たり前のことなんだけど、

心のどっかで、俺なら大丈夫って自惚れてたからこういうことになったんだと、少し反省。

今年2019年の抱負は、

まさにこれ。

「何事も昨日今日で解決しようとせず、早め早めから行動し、解決していくこと。」




あれ。

おみくじに書いてあったあの謎の短歌。

まさかそういうこと?

なんとなく今なら意味がわかる気がする。

おみくじって案外スゲーな。


P.S 近々、今年一発目の情報解禁あり。お楽しみに。

photo by Rio Nakamura

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